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福井地方裁判所 昭和52年(ワ)2号 判決 1978年10月16日

原告

北出喜春

被告

金城運輸株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは各自原告に対し、金一〇三万五八五一円及び内金九三万五八五一円に対する昭和四九年一月三一日から、内金一〇万円に対する本判決言渡の翌日から、それぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余は被告らの連帯負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自原告に対し、金二〇四万八六八五円及び内金一七九万八六八五円に対する昭和四九年一月三一日から、内金二五万円に対する本訴状送達の翌日からそれぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告らの請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、次の交通事故により受傷した。

(一) 発生日時 昭和四九年一月三〇日午前一時二〇分頃

(二) 発生場所 福井県坂井郡丸岡町羽崎地籍国道八号線(当時県場バイパス)

(三) 事故車両 大型貨物自動車、登録番号石一一か九六一

(四) 運転者 被告水由道雄

(五) 事故態様 被告水由は、事故車両を運転して福井市方面から金沢市方面に向つて時速約五〇キロメートルで北進中、進路前方左側端に普通乗用自動車(運転者訴外佐藤美季男、登録番号山形一さ一〇一三)が停車しているのを発見し、その左側を通過するためハンドルを右転把し、道路中央部付近に進出したところ、対向車両が接近して来るのを認め、それとの衝突を回避すべく、慌てて事故車両のハンドルを左転把した際、前記停車車両後部に追突し、よつて事故車両助手席に同乗していた原告に対し、傷害を負わせたものである。

(六) 受傷内容 原告は、本件事故により右下腿骨開放性複雑骨折等の傷害を受け、これを治療するため次のとおり入・通院した。

(七) 入・通院

(1) 伊藤外科医院 昭和四九年一月三〇日の一日間入院

(2) 福井県立病院 右同日から同年七月六日まで一五八日間入院、以後数回通院

(3) 石川県中央病院 数回通院

(4) 春江病院 昭和五〇年六月二日の一日通院、翌三日から同月二〇日まで一八日間入院

2  帰責事由と因果関係の存在

(一) 被告金城運輸株式会社

(1) 本位的責任―自賠法三条

被告会社は、事故車両の所有者であり、その営業である運送業務のため右車両を運行の用に供していたものであつて、右運行により本件事故が発生した。

(2) 予備的責任―民法七一五条

被告会社は、その営業である運送業務に従事させるため被告水由を使用していたものであり、本件事故は被告水由が被告会社の事業の執行についてなした不法行為である。

(二) 被告水由―民法七〇九条

被告水由は、貨物自動車運送事業を営む被告会社に運転手として雇傭されているものであるが、自動車運転者は対向車の接近状況を注視してその動静に応じた速度と運転方法をとり、適正進路を保持して進行すべき注意義務があるのみならず、事故当時は積雪により路上が凍結していたのであるから、徐行をし進路前方に停車している車両等に追突することのないよう前方左右を充分注視して運転すべき注意義務があるのに、これを怠り、至近距離に接近していた対向車を見過し、漫然と時速約五〇キロメートルで本件道路中央部付近に進出したところ、対向車が接近しているのに気付き慌てて事故車両のハンドルを左転把し、停車車両への追突を防止すべく急制動したが間に合わず、事故車両の進路前方左側端に停車中の普通乗用車後方に追突し、よつて事故車両助手席で睡眠していた原告に対し、追突の際損壊した事故車両前部に同人の右下腿をはさませて、前記傷害を蒙らしめたものである。

3  損害 合計金五三一万三七八二円

(一) 治療費 合計金一一八万六九一六円

(1) 前記福井県立病院及び春江病院への入院治療費

(ただし、いずれも労災給付金及び自賠責保険金をもつて完済された。) 金一一八万五七一六円

(2) 福井県立病院通院治療費 金一二〇〇円

(二) 付添看護料 金一〇万六〇八〇円

(三) 入院雑費 金八万七五〇〇円

(四) 休業損害 金六一万五四一〇円

(1) 原告は、本件事故当時貨物自動車助手として被告会社に勤務していたものであるが、本件事故による傷害のため事故発生日から昭和四九年七月六日までの一五八日間右会社に出勤することができなかつた。

(2) 本件事故当時における原告の一日当り平均賃金は金二四七七円であり、原告は右休業により金三九万一三六六円の損害を受けた。

2,477(円)×158(日)=391,366(円)

(3) 原告は、事故発生に至るまで健康な成人男子として就労しており、年齢二五歳の男子平均月収額金一二万三九〇〇円(一日平均四〇七三円)の収益を得べき労働能力を具有していた。原告は、事故後の昭和五一年一二月には月額金一二万〇七六八円(一日平均金三八九五円)の収益を得ている。故に評定主義の見地から、一日平均金三八九五円の逸失利益が算定さるべきである。

120,768(円)×1/31≒3,895(円)

3,895(円)×158(日)=615,410(円)

(五) 後遺障害による逸失利益 金九六万七八七六円

原告は本件事故による傷害により、自賠法施行令別表所定の一四級九号の後遺障害を残すにいたつた。その労働能力喪失率は五パーセントであり、その存続期間は二〇年間である。

3,895(円・日当)×0.05(労働能力喪失率)×365(日)×13.616(ホフマン係数)≒967,876(円)

(六) 慰藉料 合計金二一〇万円

(1) 入・通院慰藉料 金一四〇万円

原告は、本件事故発生後一七五日の長期間に亘つて病床生活を余儀なくされ、開放性複雑骨折の治療のためのギブス固定や歩行練習を必要とし、要付添看護の重傷患者として治療に専念せざるを得なかつたのであるから、その精神的苦痛は甚大である。

(2) 後遺障害による慰藉料 金七〇万円

原告は、本件事故による後遺障害として、膝関節の屈曲に運動制限、しびれ、痛感を生じた外、めまいに悩まされ、前記後遺障害を残すにいたつた。

(七) 弁護士費用 金二五万円

被告両名が任意弁済に応じないため、原告は、原告訴訟代理人に本訴の提起・追行を委任し、着手手数料として金五万円、成功報酬として勝訴額の一割を支払うことを約した。

4  損益相殺 合計金二三三万九一五七円

(一) 自賠責保険金 金九八万五二八〇円

(二) 労災給付金 金一二一万三八七七円

(三) 被告会社の任意弁済 金一四万円

5  よつて原告は、被告会社に対し本位的には自賠法三条、予備的には民法七一五条に基づき、被告水由に対し民法七〇九条に基づき、各自損害金合計金五三一万三七八二円から損益相殺合計金二三三万九一五七円を控除した残余金二九七万〇二六二円の内金二〇四万八六八五円、及び内金一七九万八六八五円に対する事故発生翌日の昭和四九年一月三一日から、内金二五万円に対する本訴状送達の翌日から、それぞれ支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  被告らの請求原因に対する認否及び主張

1  請求原因第一項中、(五)の停車車両(山形一さ一〇一三)の停止位置及び被告水由が慌てたとの事実、(七)の(2)の県立病院入院期間を否認する。その余の事実は認める。

原告の右県立病院入院期間の大部分は、本件事故による傷害と無関係な肝炎の治療のためのものである。

2  同第二項の事実は否認する。

(一) 被告会社に対する請求について

(1) 原告の被告会社に対する本位的請求は、被害者が「他人性」を有することを必要とする。原告は、自賠法二条四号にいわゆる「運転の補助に従事する者」に該当し、同法三条にいわゆる「他人」には該当しない。

(2) 原告は、事故当時は被告水由とともに事故車両の運転席にあつてその運転の業務に従事していたものであり、自己の過失により本件衝突事故を惹起したものであつて、民法七一五条にいう「第三者」に該当しない。

(二) 被告水由の帰責事由について

本件事故現場には積雪はなかつた。被告水由は、時速約四〇キロメートルで運転しており、前方注視義務を尽していた。

原告は、被告水由とともに運転席に着き、事故車両の運転業務に従事していた者であるところ、うとうとしていて前方を注視せず、これが本件事故発生の一因をなした。本件道路は、駐車禁止の規制が行われていたところ、前記停車車等三両は、駐車表示を何ら施さぬまま本件道路進路左側に駐車しており、これまた本件事故発生の一因をなした。

本件事故の発生原因は、追突された三台の車両の違法駐車及び事故車両の運転者たる原告の居眠りの二つであつて、被告水由には何らの過失もない。

3(一)  請求原因第三項中、(一)の(1)、(二)、(三)及び(四)の(1)(2)は認め、(七)は不知であり、その余は否認する。

(二)  原告の休業損の数額算定(請求原因第三項(四)の(3))について、最低賃金補償については、最低賃金の数額の具体的主張がない。原告が本件事故による休業期間の前後を通じて被告会社に勤務していたことは原告の自認するところであり、事故による長期休業後ひき続いて失職してしまつた場合など特別の事情が存在しない本件においては、休業損の算定は、事故前の平均賃金を基準とすべきである。

(三)  原告は、事故後において事故前よりも多額の賃金支払を受けており、後遺障害による逸失利益を認めるべき余地はない。

4  請求原因第四項中、(二)の事実を認め、その余は否認する。

原告は、自賠責保険より合計金一〇八万五六一〇円の給付を受け、被告会社より合計金二四万六〇八〇円の弁済を受けている。

5  請求原因第五項は争う。

6  過失相殺

原告には、事故発生につき運転助手でありながらうたたねしていて前方の違法駐車車両の発見に寄与しなかつた点、及び損害発生につき仮眠に際しては運転席後方のベツドに入るべきであつたのにこれを怠つたため受傷を免れなかつた点の二点において、重大な過失がある。右の過失割合は、原告主張の労働条件の劣悪を考慮に入れても五〇パーセントを下らず、ごく控え目に見ても三〇パーセントが相当である。

第三証拠〔略〕

理由

第一本件事故の発生

一  請求原因第一項の事実のうち、本件事故発生日時、発生場所、事故車両、右運転者、原告の受傷内容は、当事者間に争いがない。事故態様についての争いは、後の被告水田の過失の有無とともに判断することとする。

二  同第一項(七)の事実のうち、原告が伊藤外科医院に入院したこと、福井県立病院に入・通院したこと、石川県中央病院に通院したこと、及び春江病院に入院したことは、当事者間に争いがない。原告が右福井県立病院に昭和四九年一月三〇日から同年七月六日までの一五八日間入院したことも当事者間に争いはないが、被告両名は、原告の右入院期間の大部分は肝炎の治療に要した旨主張するので、この点につき判断する。

原告本人尋問の結果によれば、原告は本件交通事故による前記傷害を治療するため右病院へ入院中に輸血されたこと、その輸血によつてめまい・吐気・疲労などの症状が発生したことを認めることができる。右症状が肝炎によるものであることを認めるに足る証拠はないが、いずれにしても、右症状は原告が本件交通事故の被害にあつたことに起因するものというべきであるから、原告の右病院入院期間中における治療の全部が本件事故と相当因果関係のあるものと認めるのが相当である。

第二責任原因について

一  被告水由について

1  いずれも成立に争いのない甲第一三号証の一、第一四ないし第一六号証、第一七号証の一、三、第二三、第二四号証、第三三号証、第三八号証を総合すれば、次の事実を認めることができる。

即ち、被告水由の運転する本件事故車両は本件事故発生当時は時速約四五キロメートルで走行していたこと、本件道路には圧雪がありそれが凍結し、いわゆるアイスバーン状態になつており、急制動をかけると自動車が滑走しやすい状況であつたこと、本件事故車両はスノータイヤではあつたがチエーンは装着していなかつたこと、事故車両のヘツドライトは下向きになつていたこと、被告水由は停車車両をその手前約八八メートルで発見したが、それが進行しているものと誤信し、そのままの速度で進行したところ、その手前約三四メートルに接近してはじめて右車両が停車中であることに気付いたこと、そこで被告水由が停車車両を追い越そうとしたところ、対向車線を走行して来る車両があり、かつ、停車車両が三台であつたため右追越しを断念し、停車車両の手前約三四メートルで急制動をかけたのであるが間にあわず、それに追突してしまつたこと、右追突により原告が右下腿骨開放性複雑骨折等の傷害を受けたことを認めることができ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

2  右認定した事実によれば、被告水由には、自動車運転者として、道路が凍結し滑走しやすい状況にある場合には、チエーン等を装着して徐行運転し、かつ、前方の状況を注視して急制動の際の滑走による事故の発生を防止すべき注意義務があるのに、これを怠つた過失があるものというべく、原告に対する責任を免えないというべきである。

3  なお、前掲甲第二三号証、第三三号証、原告本人の尋問の結果を総合すれば、本件事故現場付近道路が駐車禁止区域であり、右停車車両が駐車合図等の不充分のまま停車していたことが認められるのであるが、右事実は、被告水由の前記過失を否定しさるものではない。

また、成立に争いのない甲第一七号証の四、第二八号証、前掲甲第一六号証、第二三号証、第三三号証、原告及び被告の各本人尋問の結果を総合すると、原告は本件事故当時事故車両の助手席に同乗し仮眠していたこと、原告が当時運転免許を有せず、荷物の積み降ろしやチエーン着脱等を手伝う運転助手であつたことが認められる。しかしながら右事実関係のもとにおいて、原告において事故車両の運転進行中、たえず運転補助者として前方を注視して運転者に対し注意を喚起する等、事故の発生を未然に防止すべき注意義務を負うべきものと解するのは相当でない。

二  被告会社について

1  本件事故が被告水由の過失によつて発生したものであることは、前記認定説示のとおりである。

ところで、前掲甲第一六号証、第二三号証、第二八号証、第三三号証、成立に争いのない甲第一九号証、原告及び被告の各本人尋問の結果を総合すると、本件事故当時の本件事故車両の保有者は被告会社であること、被告会社は本件事故車両をその営業である運送業の用に供していたこと、本件事故は被告会社に運転手として勤務していた被告水由が被告会社の右営業に従事していた際に発生したものであることを認めることができ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

してみれば被告会社は、運行供用者または使用者として、本件事故により他人または第三者に生じた損害を賠償する義務を負うべきものである。

2  次に、被告らは、原告が自賠法二条四項にいわゆる運転補助者であつて、同法三条の「他人」には該当しない旨主張するので、この点について判断する。

原告の本件事故当時における職務内容等は前記認定のとおりであるが、原告がトラツクの運転助手であり、自賠法二条四項の運転補助者にあたり、発・停車時における誘導の如く補助者としての本来の職務に従事中の事故受傷の場合には、運転補助者としての職務執行中というべきであるから同法三条の「他人」に該当しないのは、所論のとおりである。

しかしながら、これと異なり、通常の走行中に助手席で仮眠している場合において、運転者の過失による事故により運転助手が人身傷害を蒙つた場合など交通事故が運転助手の職務の範囲外の事実に起因する場合には、運転助手は運転補助者の地位から離脱して被害を受けた「他人」として保護されると解するのが相当である。

そうすると、被告会社は、自賠法三条により原告に生じた損害を賠償する責に任ずべきである。

第三損害について

一  争いのない損害額 合計金一三七万九二九六円

福井県立病院及び春江病院における原告の入院治療費が合計金一一八万五七一六円であること、右入院時における必要と認められる付添看護料が金一〇万六〇八〇円であること、及び入院雑費が金八万七五〇〇円であつたことはいずれも当事者間に争いがない。

二  原告の受けたその他の損害 合計金二四六万二八九一円

1  治療費

いずれも成立に争いのない甲第五号証の一、二、第一一、第一二号証及び弁論の全趣旨を総合すると、原告が本件事故による受傷の治療のため昭和四九年八月五日及び同年一二月二八日に福井県立病院に通院して治療を受けたこと、原告が右治療費として金一〇〇〇円及び金二〇〇円の合計金一二〇〇円を支払つたことを認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。(請求原因第三項(一)の(2)の損害)。

2  休業損

原告の本件事故による休業期間が一五八日間であること(請求原因第三項(四)の(1))、原告の事故発生前における一日当りの平均賃金が金二四七七円であり、右休業期間中における原告の休業損害額が金三九万一三六六円であること(同(四)の(2))は、当事者間に争いがない。

なお、原告は、休業損害の算定にあたり、その基準となるべきものは事故後の昭和五一年一二月分の賃金である旨主張するが、原告及び被告の各本人尋問の結果によれば、原告は右休業期間の前後を通じて被告会社に雇傭されていたものであるが、右休業期間中に原告の賃金が昇給したことを認めるに足る証拠はなく、休業損害は被害者が被害を受けずに就労していたならば得べかりし利益を補填するものである以上、休業期間が数年に亘る特別事情の存しない限り、休業損害算定の基礎としては事故直前の賃金によるのが相当である。

3  逸失利益

(一) いずれも成立に争いのない甲第二号証の二、第三九号証の一九及び原告本人尋問の結果を総合すれば、原告の本件事故による受傷は昭和五〇年七月七日症状固定したものの正座不能・しびれ痛感の後遺障害が残り、また右膝関節の屈曲が不充分となり跛行せざるをえなくなつたことを認めることができる。

(二) 右後遺障害は、いわゆるむちうち症とは異なり、相当期間を経ることによつて治癒するものではないから、その存続期間を二〇年と認めるのが相当である。しかして、右障害は、原告の労働能力を完全に喪失させるものではなく、下肢を駆使しない職務に従事するならば殆んど労働に障害を与えるものではなく、右後遺障害による労働能力の喪失率は五パーセントと認めるのが相当である。

(三) いずれも成立に争いのない甲第三九号証の二、一五、一六、第四三号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告の事故前の平均賃金が一日当り金二四七七円であること、原告の後遺障害が固定したのは事故後約一年六月後の昭和五〇年七月七日であること、後遺障害固定後約一年五月後の昭和五一年一二月頃の平均賃金が一日当り金三九一七円であること、更にその一年三月後である昭和五三年二月頃の平均賃金が一日当り金五〇〇〇円であること、昭和四九年当時における原告の賃金が同一年齢の男子平均賃金の約七三・一三パーセントであること及び昭和五〇年当時における原告と同一年齢男子の平均賃金が一日当り金四一三〇円であることを認めることができる。

してみれば、後遺障害を受けたことによる逸失利益の算定の基礎となるべき昭和五〇年七月当時の原告の平均賃金は、一日当り金三一〇〇円と認めるのが相当である。

(四) 以上により、後遺障害による逸失利益を算定すると、次のとおり金七七万〇三二五円となる。

3,100(円)×0.05×365(日)×13.616(ホフマン係数)=770,325(円)

4  慰藉料

本件事故の態様、原告の受傷の部位・程度、治療期間、後遺障害の部位・程度その他本件に顕われた一切の事情を斟酌すると、原告において請求しうる慰藉料は金一三〇万円と認めるのが相当である。

第四過失相殺及び損益相殺

一  以上によれば、被告らは原告に対し、各自金三八四万二一八七円を支払うべきこととなる。

ところで、原告が、本件事故車両の助手席において仮眠中に本件事故が発生したものであることは先に認定したとおりであり、原告の前認定の職務内容に照らすと、原告には損害の拡大について若干の過失があつたものといわざるをえない。ただ、原告の受傷の部位が下腿部であり、前掲甲第二三号証、第三三号証によれば、本件事故車両の前方下部が追突による衝撃で損壊したことによる受傷であるから、原告が助手席にいるかぎりたとえ仮眠していなくとも本件被害は避けられないところであつたというべきである。故に原告の損害拡大についての過失割合は一〇パーセントと認めるのが相当である。そうすると、被告らが原告に対して支払うべき損害賠償額は金三四五万七九六八円となるわけである。

二  損害の填補 合計金二五二万二一一七円

1  原告が本件事故について、労働者災害補償法に基づく保険給付として合計金一二一万三八七七円を受領したことは、当事者間に争いがない。

2  自賠責保険金 合計金一〇三万九二六〇円

(一) 成立に争いのない甲第三九号証の二、五ないし一三によれば、労災保険給付より治療費として支払われたのは合計金七二万八八八六円であることを認めることができる。

しかして、福井県立病院及び春江病院における入院治療費の合計が金一一八万五七一六円であり、右治療費が労災保険及び自賠責保険により完済されたことの当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨を総合すれば、治療費として金四五万六八三〇円が自賠責保険より支払われたことを認めることができ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

(二) 成立に争いのない甲第六号証の一、二、乙第一三号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、自賠責保険金二一万二四三〇円を昭和四九年七月二二日、同金三七万円を昭和五一年五月七日、それぞれ受領したことを認めることができる。

3  被告会社の弁済 合計金二六万八九八〇円

いずれも成立に争いのない乙第一ないし第八号証、第一〇ないし第一二号証、第一四号証、第一八号証の一、二、第一九号証の一ないし五、第二〇号証の二、四、第二〇号証の五の一、二及び弁論の全趣旨を総合すると、被告会社は、いずれも昭和四九年中に、原告の前認定の損害につき次のとおり弁済したことを認めることができる。

(一) 原告に対する弁済 合計金一六万二八〇〇円

(二) 原告の前記入院中の付添看護婦吉田花子に対して支払つた付添看護料等 合計金七万一六八〇円

(三) 原告の前記入院中に付添看護をした原告の母北出すゞのに対する費用の弁済 金三万四五〇〇円

4  以上のとおり、原告は本件事故による損害につき、既に金二五二万二一一七円の損害の填補がなされているのであるから、被告らが原告に対して支払うべき額はこれを控除した金九三万五八五一円となる。

第五弁護士費用 金一〇万円

原告は本件訴訟の提起・追行をその訴訟代理人に委任しているものであり、本件訴訟の難易、請求額、認容額等を考え合せると、原告において負担すべき弁護士費用のうち金一〇万円を被告らに負担させるのが相当である。

第六結論

以上のとおり、本訴請求は、原告が被告ら各自に対し、金一〇三万五八五一円及び内金九三万五八五一円に対する事故発生の翌日である昭和四九年一月三一日から、内金一〇万円(弁護士費用)に対する本判決言渡の翌日から、それぞれ支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川端浩)

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